酒処 はちわれ

わたしの お酒のおつまみ

どうしようもなく猫

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わたしが幼い頃、わたしの家では黒いハチワレ柄の猫を飼っていた。彼は雑種で元野良猫であり、野性味あふれる男らしい性格の猫だった。このブログのトップ画像にもある通り、ナイフのように鋭い眼光を持った、どこか危険で妖しい猫でもあった。

 

彼との思い出は少ない。というのも、最も多くの時間を共にしたのが、わたしが赤ん坊の頃であったからだ。とはいえ、記憶なんて曖昧なものよりも、確実に彼とともに生きてきたという証をわたしは所持している。それは、彼と同じ黒のハチワレ柄をした小さな猫のぬいぐるみである。わたしは彼を、近所への買い出しから家族旅行まで、どこへでも連れて行った。彼とともに泣き、笑い、色々な景色を見てきた。彼はわたしの唯一の親友であり、親愛なるパートナーである。

 

さて、話は大きく変わる。わたしは花の絵を描くという趣味がある。そこで、わたしが描いたという証のような、いわゆるサインみたいなものが欲しくなった。素人が偉そうにサインだなんて…と恐縮する気持ちもあるのだが、「物事は格好から入る」というのも時には良いのではないかと思ったので、何か自分だけのサインをつくることにしてみた。

 

以前、〈ふくろうはわたしのトレードマークである〉という話を記事にしたことがあるのだが、心の大親友である「彼」もまたわたしの大切なトレードマークである。それに、有名人気取りで蛇が這ったあとのようなサインをつくるよりも、絵の隅っこにスタンプのようにマークを描くというのも良いなと思ったので、彼の顔をサインとして使うことを試みた。これはお正月限定のサインである。

 

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皆さまにわたしの友人である彼を詳しく紹介しよう。

 

彼は猫としてはもう良い年の大人猫で、少し野蛮なところがある。しかし、本当は不器用なだけであり、心の根っこには優しさが見え隠れているような猫だ。毎朝日が高く昇った頃になるとゆっくりと起きだし、しばらくぼーっとしたあと散歩に出かける。餌は他人(猫)には一切頼らず、自分で調達する。彼は天性の一匹狼(猫)であり、それが彼のポリシーでもあるからだ。しかしながら、喧嘩に強いというわけではない。しょっちゅう近所のボス猫に餌を横取りされているし、勝敗はいつも五分五分といったところだ。同時に、そんなところが彼の愛らしい部分でもある。彼は群れない。毎日空き地の隅で昼下がりに開かれる集会(集会といっても、猫が集まって皆でただそこにいるだけ)にもあまり参加しないので、他の猫には奇妙な印象を与えている。彼自身、それを誰よりも自覚しているのだが、そんな自分を恥じたりはしない。たまに、寒空の下、ひとり夜を見送ることに感傷的になるときもあるが、こんな切なさを噛みしめる、言葉では言い表せぬこの淡く優しい時間が好きなのだ。そうして彼はどの猫よりも遅く眠りにつく。彼はどこまでもそんな猫であり、今日もひとり放浪するのである。そして、そんな彼が、どうしようもなくわたしの心から分かり合える大親友なのである。